フルーツ王国と呼ばれる山梨県には、ぶどうの栽培で「名人」と呼ばれる人たちがいます。でも、その技を伝えられる人はほとんどいません。なぜなら、名人の「経験と勘」は簡単に伝えられるものではないし、誰も名人の頭の中を見ることができないからです。
そこで私たちは、おいしいぶどうをつくるために「経験と勘」を「数値化・見える化」したいと考えました。
たとえば、健康診断では血液検査をして、数字をもとに健康状態を診断します。ぶどうだって同じように数値化できれば「栄養や水が足りない」「房についた粒が多すぎる」など、やるべきことがわかりやすくなるでしょう。
ぶどう栽培をできるだけ数値化し、数値に基づいて栽培すれば、名人でなくてもおいしいぶどうをつくることができるはず。そんな確信を胸に、クピド・ファームはドローンやスマホアプリなど、IoTやAIを使ったぶどう栽培に取り組んできました。
クピド・ファームの農場がある韮崎市の上ノ山は、年間を通じて晴れが多く、昼と夜の寒暖差も大きいため、おいしさのギュッと詰まったぶどうを育てやすい地域です。
空気がカラッとしているためぶどうが病気にかかりにくく、夜は涼しいのでエネルギーを使わず、しっかりと粒にため込んで休むことができます。しかも、茅ヶ岳から西南方面に広がる裾野に位置するため、日照条件も優れているのです。だから、糖度の高いぶどうをつくることができます。
富士山や南アルプスの山々、八ヶ岳など日本の名山に囲まれた風光明媚な農場に、みなさんもぜひ一度遊びに来てください。壮大な山々がつくり出す美しい景色と、手塩にかけて育てた可愛いぶどうたちが待っています!
「空からぶどう畑を見ることができたら枝剪定がラクになるのに…」
ドローンによる撮影をはじめる前、私たちは屋根に登ったり、電信柱に登ったり(真似しないでください)して上からぶどう畑を見ようとしていました。
どの枝を切るか考えるとき、ぶどうの木は低いので下から仰ぎ見た時は、一部の枝しか見られません。どうしたら一度に広い範囲を見られるのか考えていたときにドローンで空撮できることを知ったのです。
ドローンで上空から写真を撮って、データを大きく引きのばせばどの枝を切ればいいのか一目瞭然。初心者でも熟練者のアドバイスがあればすぐに剪定に取り掛かることができます。日が沈んだときは作業ができませんが、出力したデータがあれば夜でも枝剪定の計画を立てることができるのです。
農林水産業みらい基金「ぶどうづくりのみらいへGO!」
IoT技術を導入した ぶどう栽培の改革 梨北農業協同組合
ぶどうの房は、何も手を加えないと、ひと房あたり100粒くらい実がつきます。実が熟すまでにだんだんと実が下に落ちて、最終的には35粒程度になりますが、手を加えないと歯抜け状態になってしまいます。
ぶどうの見映えと、味や色、粒のハリを良くするために、摘粒して35粒程度に揃えることが不可欠です。とはいえ、何千、何万という数の房の粒を数える時間はありません。
そこで私たちは、スマホカメラを活用した摘粒サポートツールをつくりました。まだまだ改良中ですが、これを使うことによって、ぶどうの粒をほぼ自動で数えることができます。